オーディオリンガルメソッド
第二言語習得研究の記憶システムと効果的な英語学習のやり方
当記事はビジネス英語スピーキング教材「パタプライングリッシュ」を利用することで、なぜスピーキング力を身につけることができるのか、科学的根拠を示しながら解説します。
今回は「オーディオリンガルメソッド」と呼ばれる英語学習法と人間の記憶システムについてご紹介します。
オーディオリンガルメソッドとは
オーディオリンガルメソッドとは、同じ表現を「刺激」として繰り返すことで「反応」が習慣化する現象を、言語構造習得に利用した外国語教授法です。1950年代、アメリカのミシガン大学教授チャールズ・カーペンター フリーズによって提唱されました。
口語が言語の中核であるという考えに基づき、音声言語を重視した教授法であることから、日本では「オーラルアプローチ」と呼ばれることもあります。
行動主義心理学
オーディオリンガルメソッドは「行動主義心理学」に基づいています。
心理学とは「人は何をどのように考えているのか?」を研究しますが、科学的に観察できる「行動」に着目した評価・研究を行動主義心理学と言います。
行動主義心理学の根底には、言語は特定の行動を何度も繰り返して学習されるという考え方があります。つまり「習慣形成」が重要であるということです。
行動主義心理学における正しい習慣形成とは、「刺激」「反応」「強化」という一連の流れにあります。
教育者が何らかの意図をもって学習者に「刺激」を与え、それに対する「反応」を観察します。反応が望ましければ報酬を与え、その好ましかった行動を「強化」することを目指す方法です。
具体的な学習方法
オーディオリンガルメソッドの具体的な学習方法としては、発音、パターンドリル、会話練習などが挙げられます。音声言語を重視し、実演によって教えられることが特長です。
特に、基本の文法表現を無意識に発話できるまでパターンを変えて学習し定着を図る「パターンプラクティス」は、オーディオリンガルメソッドの代表例です。
パターンプラクティスについて詳しい解説は「パターンプラクティス - 第二言語習得研究の記憶システムと効果的な英語学習のやり方」をご確認ください。
オーディオリンガルメソッドの目的
オーディオリンガルメソッドでは、口頭練習を通して言語学習に必要な「基礎力」を身につけることを目的としています。
つまり、自由に英会話ができるようになる応用力の前段階として必要な学習法です。次に示す5段階の方法により実践されます。
1.識別(理解) | 口頭導入 |
2.模倣 | 模倣・暗記練習 |
3.反復 | 文型練習 (パターンプラクティス) |
4.変換 | 最小対立練習、生徒間対話 |
5.選択 | 理解の確認 |
これらの順序を徹底して行い、習慣形成によって基本的な構文を覚える学習をします。
オーディオリンガルメソッドの効果
習慣形成による言語学習は、特に母語を獲得した後の学習者が外国語を習得する過程において有効な訓練です。つまり、帰国子女でない日本人が英語を習得するのに有効です。
口頭練習であることから、直接的にスピーキングやリスニングの力になりますが、反復練習によって構文を覚えることで結果的にリーディングやライティングにも役立ちます。
記憶の仕組みとの関わり
オーディオリンガルメソッドの特長は、口頭練習による「習慣形成」です。これを人間の記憶の仕組みに照らし合わせると「手続き記憶」に分類されることが分かります。
手続き記憶は長期記憶の一種で、運動や習慣、技能の記憶です。詳しい解説は「手続き記憶 - 第二言語習得研究の記憶システムと効果的な英語学習のやり方」をご確認ください。
習慣形成について注目すべき点は、それが行動に基づいたものであることです。「刺激」「反応」「強化」による習慣形成は、いわゆる「頭で考えること」ではなく「無意識における体の反応」です。
これは記憶の仕組みの分類においては、「宣言的記憶」に対する「非宣言的記憶」と言い換えることができます。
宣言的記憶とは、想起意識がある、つまり思い出している意識のある記憶であり、その内容を自分で言葉で説明できます。「陳述記憶」または「顕在記憶」とも呼ばれます。
非宣言的記憶とは、想起意識のない記憶、つまり自分の意思とは無関係に、意識しなくても思い出されてしまう記憶。言葉で説明するのが難しいことが多い。「非陳述記憶」または「潜在記憶」とも呼ばれます。
詳しい説明は「宣言的記憶(陳述記憶・顕在記憶)と非宣言的記憶(非陳述記憶・潜在記憶) - 第二言語習得研究の記憶システムと効果的な英語学習のやり方」の記事をご確認ください。
手続き記憶は、非宣言的記憶の一つです。運動や習慣、技能の記憶であり、「体が覚えている」状態を指します。
例えば、自転車に乗る方法や楽器を弾く方法は、繰り返しの行動によって獲得できます。一度、手続き記憶として獲得された情報は、一生忘れないほどの強固な記憶になります。
また、自動的に機能することも手続き記憶の特長として挙げられます。
オーディオリンガルメソッドで手続き記憶を獲得する
オーディオリンガルメソッドは、英会話において自動的に機能すべき「基礎力」をつける学習法です。
自由に英語を話すためには、そもそも話し方を知らなければ始まりません。更に言うと、話す度に文法や話し方に気を取られているようでは、到底スムーズな会話はできません。
口頭で構文を繰り返す訓練により、体が話し方を覚えている状態、つまり自動的に口から出てくる状態を目指します。
最後に
口語が言語の中核であるという考えに基づいた、音声言語を重視した教授法である「オーディオリンガルメソッド」は、まさにスピーキングを苦手とする日本人に合った学習法と言えます。
パタプライングリッシュは、オーディオリンガルメソッドの代表例である「パターンプラクティス」のデジタル教材です。
ビジネスシーンに特化した良質の型と音声が全て準備されているため、すぐに体系的にスピーキングのトレーニングを開始できます。
60日の返金保証もあるので、この記事でオーディオリンガルメソッドに興味を持った方はぜひ一度お試しください。
参考文献
- 安藤香織(2019)「英語発音指導における目標の変遷」.『英語英米文学』(59).137-149.
- 井上聡(2014)「今後の英語教育における文法指導の位置づけを考える」.『環太平洋大学研究紀要』(8).165-174.
- 濱雪乃(2017)「英語教育における CLT を中心としたコミュニケーション能力の育成をめぐる一考察: 小学校英語教育への展望」.『人間発達研究』(32).19-37.
- 西城卓也(2012)「行動主義から構成主義」.『医学教育』43巻4号.290-291.
- 堀江周三(2002)「オーディオ・リンガル教授法の適用と日本における英語教育の問題点」.『広島文化短期大学紀要』(33・34・35).45-48.
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監修:松尾 光治
元大手英会話スクールの教務主任、教材開発。在米35年、現在もニューヨーク在住。早稲田大学第一文学部中退、英検1級、TOEIC985点。英会話の講師とニューヨークでの日系商社での勤務経験から、日本人ビジネスパーソンを対象にした実用的な英語教材を開発。
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