エビングハウスの忘却曲線
第二言語習得研究の記憶システムと効果的な英語学習のやり方
当記事はビジネス英語スピーキング教材「パタプライングリッシュ」を利用することで、なぜスピーキング力を身につけることができるのか、科学的根拠を示しながら解説します。
今回は「エビングハウスの忘却曲線」について、英語学習との関連性についてご紹介します。
エビングハウスの忘却曲線とは
ドイツの心理学者エビングハウスは、人の記憶が時間の経過とともにどのように変化するのか、その過程と、記憶の忘却メカニズムの研究を行いました。
その研究結果から得られたのが、「人が一度記憶したことを再度記憶するのに、時間をどれだけ短縮できるか」を表したエビングハウスの忘却曲線です。
人が学習をする際に使う脳内の記憶システムは、大きく分けると「短期記憶」と「長期記憶」の2種類に分類されます。エビングハウスの忘却曲線は、このうち長期記憶の定着に関する研究の結果です。
短期記憶は数秒から数分間の一時的な記憶で、長期記憶は数年から一生忘れずに覚えている記憶を指します。詳細は「短期記憶と長期記憶 - 第二言語習得研究の記憶システムと効果的な英語学習のやり方」をご確認ください。
エビングハウスは「子音・母音・子音」から成り立つ無意味な音節を記憶して、その記憶の節約率を調べ出しました。
グラフの縦軸は「節約率」を表し、横軸が「時間」を表します。
「節約率」とは、一度覚えた内容を再度記憶するのにどれくらいの時間を節約できるか、その程度を表したものです。
つまり、節約率が高いほど再度学習する際に使う労力は減る、ということになります。
20分後の節約率 | 58.2% |
1時間後の節約率 | 44.2% |
1日後の節約率 | 33.7% |
6日後の節約率 | 25.4% |
1ヶ月後の節約率 | 21.1% |
この結果から分かるように、学習した内容が記憶として定着するには復習が必須です。また復習の頻度もポイントとなります。
エビングハウスの忘却曲線に基づく復習のタイミング
効果的な復習を提唱するために、エビングハウスの忘却曲線を活用した研究も進んでいます。
カナダの大学によると、人は学習した内容を100%記憶するためには、次のようなタイミングと時間で復習(反復学習)する必要があると言います。
- 1日後に10分間復習する
- 1週間後に5分間復習する
- 1ヶ月後に2-4分間復習する
このように反復学習を重ねると、1ヶ月後に復習をした際には「あ!これは知っている内容だ!」と認識できるようになるのです。
必要だと分かっていても挫折してしまいがちな反復学習も、エビングハウスの忘却曲線に基づいた適切なタイミングと時間で行えば、効率的に記憶を獲得できます。
海馬とエビングハウスの忘却曲線
英語を学習する、つまり学習した内容を長期記憶に保存されるためには海馬が大きな働きをしています。五感を通じて入ってきた情報は、脳の側頭葉の裏側にある海馬を通じて長期記憶に送られます。
海馬は繰り返し入ってきた情報のみを「重要なもの」として認識して長期記憶に送り込み、それ以外を「不要なもの」と認識するため、学んだことをしっかり長期記憶に保存するためには繰り返しの反復練習が必須なのです。
海馬に記憶が留まるのも長くて1ヶ月ほどと言われているため、復習のサイクルはエビングハウスの忘却曲線を活用すると効果的です。
エビングハウスの忘却曲線を英語学習に取り入れた方がいい理由
エビングハウスの忘却曲線を英語学習に取り入れるメリットは2つあります。
忘れる前に対策が取れる
学習の回数とタイミング次第では学習内容を忘れてしまうことが分かっているのであれば、忘れないように対策が取れます。
エビングハウスの忘却曲線に基づいた最適な復習のタイミングで再度学習をして、忘れる前に先手を打つことが大事です。
反復学習を効率的に行える
人は新たに長期記憶を獲得する際、短期記憶を経由して記憶します。
英語学習において「学んだ」と言えるのは、情報が短期記憶から長期記憶に落とし込めた時を指します。したがって、学習の際は長期記憶の獲得が欠かせません。
短期記憶から長期記憶に情報を移行するためには、更に細分化された記憶システムによって方法が少々異なりますが、基本的には反復学習が必要です。
反復学習にはエネルギーを要しますが、エビングハウスの忘却曲線を意識して最適なタイミングで学習を行うと、忙しい日常の中でも効率的に学習ができます。
エビングハウスの忘却曲線を活用する際のポイント
エビングハウスの忘却曲線を活用する際に、注意したいポイントがあります。この忘却曲線の結果は「関連性のない無意味の音節を覚えた時のものである」という点です。
そのため、関連性のある言葉や事柄を学習する際は、この曲線がより緩やかになる可能性があり、記憶の定着率は高まると考えられます。
つまり、学習の仕方次第で曲線を変えられる、ということです。
例えば「apple」の単語を覚える際に、「apple・pencil・house・cow」のように関連性のない他の単語と一緒に学習するより、「apple・banana・orange・grape」など、果物という同じくくりにある単語と一緒に学習した方が、記憶はより早く定着します。
反復学習を行う際は、意味を持たない単語や前後の学習と関連性のない文節ではなく、しっかりとイメージができるような内容で行うようにしましょう。
最後に
学習した内容を長期記憶に入れるためには、反復学習が必須です。
ただ繰り返し学習をするのではなく、エビングハウスの忘却曲線に基づいた適切なタイミングと時間で反復学習すると、より効率的に学習できます。
この忘却曲線は長期記憶全般に関する研究結果なので、リーディングやライティング、更にスピーキングの学習にも活用できます。ぜひ意識して学習に取り入れてみてください。
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参考文献
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監修:松尾 光治
元大手英会話スクールの教務主任、教材開発。在米35年、現在もニューヨーク在住。早稲田大学第一文学部中退、英検1級、TOEIC985点。英会話の講師とニューヨークでの日系商社での勤務経験から、日本人ビジネスパーソンを対象にした実用的な英語教材を開発。
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