LESSON 番外編1 最低限おさえたい発音 - 似ている母音の区別 (1)
似た母音・似た子音の違いを把握します。
発音学習のポイント
多忙なビジネスパーソンが目指すべき発音は「相手に一度で分かってもらえる発音」である。そのためには以下の2つを抑えること。- 日本人にとって聞き分けにくい音(=発音しにくい音)の違いを知っている
- これらの音を注意さえすればかなり似せて発音できる(ネイティブのきれいな発音である必要はない)
目次
[æ] と [ʌ] の区別 - staff と stuff
似て異なる2つの「ア」を学ぼう。[æ] と [ʌ] である。
日本語の「ア」に聞こえる英語の母音はいくつかあるが、[æ] と [ʌ] を日本語の「ア」にしてしまうと聞き手を混乱させやすい。そしてこの2つを取り違えると赤面ものの間違いとなるパターンがなぜか多いため、注意が必要である。
[æ] 発音のコツ
日本語の「エ」を発音。少し口を横に広げ気味にキープ。そのまま「ア」を発音する。そして喉の奥から、少し長めに発音する。
その感覚を体で覚えたら、今度は最初から「口を横に広げ気味のエ」と「ア」を同時に出すつもりで発音。母音の部分をあえてカナ表記すれば「bad」は「バッd」ではなく「ベエアッd」。「hat」は「ハッt」でなく「ヘアッt」である。
「エ」と「ア」の同時発音を忘れないこと。ややエグイ音だ。エグさの度合いは人によって違う。
「bad」と言ったつもりが「バッd」では、ビールのバドワイザー(「Budweiser」を「Bud」と縮める)になってしまう。「He's a bad guy. (あいつ悪い奴だ)」と言ったつもりが「He's a Bud guy. (彼はバドが好き)」とバーでの会話に早変わり。この程度の間違いは「赤面もの」には入らないが・・・。
中学で習った「cat」「hat」「bad」「cap」の単語を例にとって、2人のアメリカ人の [æ] 発音を聞いてみよう。ポーズがあるので自分でも真似してみよう。発音の要領を忘れずに。「口を横に広げ気味のエ」と「ア」の同時発音 + 喉の奥から、少し長めに発音。
cat | ケアッt |
hat | ヘアッt |
bad | ベエアッd |
cap | ケアッp |
[ʌ] 発音のコツ
[ʌ] はとりあえず日本語の「ア」で代用して構わない。それで通じるし、リスニングの場合もその認識でも困らない。
次の2つの語の母音を聞き比べて、どちらが [æ] [ʌ] か判断してみよう。
もう一人の例。
女性は「stuff」「staff」の順。男性は「staff」「stuff」の順だ。「エ」が混ざることで「エグさ」が加わったものが [æ] だと覚えよう。
上の音声を再度プレイして、後について自分で発音してみよう。この2つの単語の意味と使用例は下記の通り。しばらく練習したら、次の項に進もう。
staff |
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stuff |
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[æ] と [ʌ] の聞き比べ
同様にいくつかのペアで [æ] [ʌ] を聞く。最初の単語が [ʌ] の音、2番目が [æ] の音だ。
まず1回目は特に母音の違いに耳を傾けることに集中。単語の意味の違いも同時に考えると音に全身で集中できない。
2回目以降は、似て聞こえるこれらのペアの意味も考えてみよう。勘違いしているものがあるかもしれない。自明のものを除いて、各語の意味と例文を下に記した。
単語の意味・例文
- buck-back
- luck-lack
- truck-track
- flush-flash
- crush-crash
- drug-drag
- lust-last
- run-ran
- fun-fan
buck | [名詞][米口語] 1ドル |
truck | トラック、台車 |
track |
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flush |
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flash |
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crush |
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crash |
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drug | ドラッグ、薬物 |
drag |
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lust |
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fan | [名詞] ファン(熱狂的支持者の意味のファン)、(扇風機などの)ファン |
ネイティブに頼むのに気が引けたので音声はないが「fax」の「a」の発音を [ʌ] に変えてしまうと、これまたオフィスでドッキリさせてしまうだろう。
今度は、この一連の語を母音に注意して自分で発音してみよう。今、一番大切なことは、あなたの意識の中でこの2つの「ア」の違いをきちんと認識し、発音する時も区別することだ。
練習した単語をランダムに並べるので、聞きながら書き出してみよう。「エ」が混ざることで「エグさ」が加わったものが [æ] である。聞き取りが怪しければ、一時停止したり繰り返したりしよう。
[答えをみる][答えを隠す]
もし現時点で聞き分けの正答率が低くてもあまり気にする必要はない。訓練方法としては、文字を見ながらサンプル音声の前に自分で発音してみて、サンプル音声と比べる方法も役立つので試して欲しい。
ここで最重要なのは以下の3点だ。
- 違いがあることを認識した
- 自分では区別して発音できるようになった
- この2つの母音の違いで、どのような違う意味の単語があるのか確認した
この2つの母音の違いで意味が全く変わってしまう言葉があるという意識を持てた時点で、あなたのリスニングはもう前進している。何よりも「似せよう」と努力して声を出して練習したことで、この2つの音の違いが、もはや「気づかない雑音」ではなくなっている。
そうすると、現実の会話でも音に対するアンテナが鋭くなり、次第に他者の発音を聞き分ける能力が後からついてくる。「どちらかな?」という今までは思いつきもしなかった疑問も出てくる。
文脈から推測できる場合も多いし、どうしても必要なら相手に確認することも可能だ。
もう一つ挑戦してみよう。今度は男性の読みだ。
[答えをみる][答えを隠す]
聞き分けにくいが非常に大切なペア
[æ] と [ʌ] のペアではないのだが、取り違えると大きな混乱を招くペアをカバーする。「can」と「can't」の違いだ。
「can」は「できます」の意味を特に強調する場合を除いて母音が相当弱くなる。発音記号にすれば、とりあえずは [kən] というところ。母音がさらに弱くなり [kn] といった音になることもある。
一方、「can't」は母音は強く長め、そして語尾の破裂音「T」が聞こえないことが多い。つまり「can't」が「キャーン」と聞こえる。
まずは「can」と「can't」が、はっきり区別できる例を聞こう。
① I can work on that. → ② I can't work on that. の順で女性と男性が発話している。
では「can」と「can't」の区別が、より難しい例。
これも① I can work on that. → ② I can't work on that. の順で女性と男性が発話しているが、特に男性の方は区別しにくい。
「can」は [kn] に近いような母音の非常に弱い音。「can't」の方が、やや母音が強い程度の違いだ。この聞き違いは、ビジネス場面では重大なすれ違いに至りかねないので注意が必要。
少しでも聞き取りが怪しければ「You cAn or you cAn'T ?」と聞いて、確認した方がいい。実は英語ネイティブでもそうしている。
[ɔ:] と [ou] の区別 - bald と bold
まずはこのペアをしっかり聞き比べてみよう。どっちの意味が何だったか即座に言えるだろうか?
最初は [ɔ:] が母音の「bald」で「はげ頭の、(山などに)木がない」の意味。2番目は [ou] が母音の「bold」は「勇敢な」、もう一つ「(フォントが)太字の」というビジネスでよく使う意味もある。
「He's so bald.」と勇敢さを褒めてしまうと、シャレにならない!残念(?)なことに、日本人にとって「[ou] bold」の方が発音しやすい。一方、「[ɔ:] bald」は意識して発音しないと、ついつい「[ou] bold」に聞こえがちなので、注意。
[ɔ:]と[ou] 発音のコツ
[ɔ:] の発音
日本語の「ア」の大きさに口を開け、日本語の「オ」を発音する。「オ」を発音するのに使う喉の部分に力をいれる感じだ。
[ou] の発音
日本語の「オ」を強めに(← 声を大きくというより、息をより多く、より早く出す)言って、その勢いでオマケに「ウ」がくっつく感じ。
いくつか聞いてみよう。ペアのうちの最初の単語は [ɔ:] 、2つ目は [ou] を使う。単語の意味の勘違いがないか洗い出そう。
じっくり聞いたら、自分でも発音してみよう。
単語の意味
- caught-coat
- called-cold
- law-low
- ball-bowl
- hall-whole
- raw-row
- bought-boat
coat |
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bowl | 料理用のボウル、ボーリングのボウル |
hall | コンサートなどのホール、廊下 |
raw | 生の、原料のままの、粗野な |
row |
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この一連の単語をランダムに言うので書き出してみよう。けっこう手ごわいかも知れない。「R」と「L」の聞き分けで詰まっても気にしないでいい。
[答えをみる][答えを隠す]