LESSON 番外編2 最低限おさえたい発音 - 似ている母音の区別 (2)
[ə:r] と [a:r] の区別 - heard と hard
どちらもカタカナだと「アー」だが、「アー」とは違う音。耳を集中させて聞けば単語レベルでの聞き分けは、そう難しいものではないし、自分でも発音できるだろう。
問題となりがちなのは、会話中での聞き分け、会話中でとっさに自分で発音し分けることである。
[ə:r]:曖昧母音 + R 発音のコツ
曖昧母音 [ə] は舌も口も力をいれず脱力。日本語で「ウ~エ~」「ウ~エ~」と繰り返して言って、「ウ」と「エ」の移行する中間のような音。
この口の形で [r] を発音。舌を後ろ、喉の奥へ向けて丸める。口の天井と舌の間の狭い空間に、息(声)が入り、こもって声が響く音。声ははっきり出す。
[a:r] 発音のコツ
口の開き方はやや大きめ。日本語の「あ」の開き方、もしくはもう少し大きいというところ。口の開き加減より大切なのは口の中だ。口の中の空間を広くする。
あくびをかみ殺そうとすると、あごが下がって特に奥の方が広くなると思う。その感じだ。まず「あ」と、その口の形で発音して、すぐに [r] を発音。舌先を後ろ、喉の奥へ向けて丸める。
スペリングでは子音の直後に「ar」のつくケースが多い(start, smart, part, park, chart など)
では「heard」と「hard」を聞き比べて真似してみよう。
最初が「heard」、2番目が「hard」だ。次も同様。
では、単語のペアをいくつか聞こう。最初の語が [ə:r] 、2番目が [a:r] だ。
単語の意味・例文
- curve-carve
- curb-carb
- firm-farm
curve |
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carve | (食事の時に)肉を切り分ける |
curb |
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carb |
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firm |
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farm | 農場 |
[ə:r] [a:r] 聞き分け練習
ランダムに読み上げるので聞き取ってみよう。語尾の「b」「v」の聞き分けが難しいかもしれない。
聞き分けに役立つ最大の違いは [b] は「ブチっ」と破裂した感じで短く、息は強い。[v] は濁ってこすれる感じで [b] より長く聞こえる。
この2つの違いはこの先の番外編レッスンでカバーするが、余裕があれば下記の音声でついでにトライしてみよう。
[答えをみる][答えを隠す]
似た母音のペアいろいろ
ここまでのパターンに含まれないが、ビジネス場面で日本人が混乱しがちなペアの音。聞く場合は文脈で分かることも多い。自分で発音する時はきちんと区別しよう。
ペアで聞き比べ、どこまで正確に書き出せるか試してみよう。
[答えをみる][答えを隠す]
発音記号で比べると以下の通り。
- walk [wɔ:k] - work [wə:rk]
- foam [foum] - form [fɔ:rm]
- fast [fæst] - first [fə:rst]
- cooperation [kouapəreiʃən] - corporation [kɔ:rpreiʃən]
- fund [fʌnd] - fond [fand]
- vary [veəri] - very [veri]
- adapt [ədæpt] - adopt [ədapt]
- want [want] - won't [wount]
foam | 「泡」の意味。ビジネスで使うとしたら「foam at the mouth = カンカンに怒る」 日本語の「口から泡を吹く」の直訳に近い英語だが、英語の方にも字義通り「口から泡を吹く」の意味もある。 |
cooperation / corporation | 「協力・協調」と「(企業などの)法人、会社」の違い。分かってはいるが、つい間違えがちの単語。 |
fund |
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fond | 好んで。「I'm fond of ~」の「fond」 |
vary | 変える、変更する。名詞は「variation」 |
adapt |
|
adopt |
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では、発音してみよう。
ランダムに読み上げるので、書き出してみよう。
[答えをみる][答えを隠す]
ランダムに読上げるので、書き出してみよう。
「want」「adopt」の [a] の発音は [ɔ] と表記されることもある。そして実はこれは [ɔ:] と同じ音(bald, called, bought, hall など)だ。
どちらも日本語の「ア」の大きさに口をあけ、日本語の「オ」を発音する音。つまり「cot」「caught」は同じ音ということだ。「bot (ロボット、ボット)」と「bought」も同じ音。
ネイティブの発音を一応聞いておく。
この件は(しばしば不毛な)いろいろな議論もあり、細かいことを言い始めると混乱を招いてしまう。
根本には、英語ネイティブは日本の学校で教わる「短母音」「長母音」という仕方で音の区別をしないということがある。(そのため日本語を学んでいる英米人は「しゅじん」と「しゅーじん」、「おばさん」と「おばーさん」の区別に手こずる。)
「fill」の「短母音」を長くすると「feel」という「長母音」の単語になるのではない。「full」を伸ばせば「fool」になるのでもない。実際には長さではなく音自体が違う。だが、この微妙な違いは大きな問題にはならないのでここでは追求しない。
このレッスンでとにかく覚えて欲しいのは「cot」「caught」の母音 ( [a] もしくは [ɔ]/[ɔ:] = どれも同じ音)が日本語の「オ」ではないことを認識、そして似て明らかに異なる音「coat [kout]」との区別を明確にすることだ。