CHAPTER 2 理解の確認
相手の発言内容を自分の言葉で返して確認する、自分の発言内容が相手に正しく伝わっているかを確認するフレーズを紹介します。
目次
CULTURAL TIPS
会議の場で言葉にハンディキャップがある日本人参加者は、他の参加者と理解にズレがないか、少しでも怪しいと思ったらきちんと確認することが大切だ。双方の理解があやふやな可能性を持ったまま相手のペースに巻き込まれてしまうと、会議で望ましい成果を出すことは到底無理だろう。
自分が聞いて理解したことを自分の言葉で返して相手に確認する「アクティブリスニング(積極的傾聴)」の手法は、ビジネス研修においても世界中で広く取り入れられている。他人の話をしっかりと聞かない人がいかに多いかということだろう。
このアクティブリスニングは日本人ビジネスパーソンにとって、単に理解を確認する以上の価値がある。相手の意見に賛成できない場合、相手の話を最後まで聞いてから反論しようとするとタイミングを逃すことが多い。
途中でさえぎって、自分の理解を確認しつつ賛成できない旨を述べることで、相手が独走で突っ走るのを避けることができる。これは相手にとっても無駄に話し続けずに済むので有り難いことだ。
全フレーズ
自分の理解が正しいか確認するフレーズ
確認したい意向を伝えます。このようにわざわざ前置きをすることで、あなたが非英語ネイティブであることを他の参加者に再認識させる役にも立ちます。
自分の言葉で言い換えて理解が正しいか確認するフレーズ(1)
相手の言葉を、自分の言葉で言い換えて理解が正しいか確認したい時に使用します。打ち解けている相手に対してなら 2-1、2-2 のような前置きなしに質問しても良いです。
B: Excuse me. So, you're saying they'll be in trouble if they don't follow the basic business etiquette, right?A: 当然期待されるプロトコル(ビジネスや外交上の手順・一定の形式)に従わなければ彼らは仕事を失いますね。(客がいなくなりますね)
B: すいません、彼らが基本的なビジネス上のエチケットを守らなければ問題になるということですよね?「expected protocols」の意味を推測し、自分の言葉でその内容を述べて、その理解で正しいか確認をとっている。
B: You mean they need to follow the basic business etiquette, right?A: 当然期待されるプロトコル(ビジネスや外交上の手順・一定の形式)に従わなければ彼らは仕事を失いますね。(客がいなくなりますね)
B: 彼らが基本的なビジネス上のエチケットを守る必要があるということですよね?自分の言葉で述べる理解の部分は簡略化している。
聞き取れなかった時、意味が分からなかった時のフレーズ(2)
まず相手の言葉をそのまま使って繰り返してから、自分の言葉で言い換えて理解が正しいか確認するフレーズです。
聞き取れて理解もできたと考える相手の言葉を念のため(自分の言葉で)口に出して確認してから、自分の理解や解釈を述べます。このように自分の言葉で言い換えることは「paraphrase」すると言います。次のようなパターンになります。
B: Let me see if I understand correctly. You said we need a contingency plan. That means we need a backup plan in case there's a disaster, right?A: 危機管理プロセスの一環として、緊急時対応プランを用意しないといけません。
B: 私の理解を確認させてください。緊急対応プランが必要だとおっしゃいましたね。それは、災害に備えてバックアッププランが必要だということですよね?
相手の質問のポイントを確認するフレーズ
「So your question is~」と始めてポイントを述べ最後に「right?」または「correct?」と相手に確認を求めます。
「So your question is~」の後は疑問詞節やif節を使っても良いし、あるいは「So your question is...」と余韻を持たせて一旦切り、その後に相手の質問を丸ごと引用する方法もシンプルで使いやすいだろう。
相手の質問を丸ごと引用するフレーズ
日本語で自分の理解を確認したい時のフレーズ
他にも日本人参加者がいる会議では、日本語で確認を取り合いたいこともあるでしょう。その時には以下のような表現が役立ちます。
B: Sure, go ahead.
A: Thanks for your understanding.(気のおけない相手なら "Thanks." で十分)
-- 日本人同士で確認し合う --
A: Thanks for your patience.A: 私の理解を確かめるために東郷さんと話させてください。ほんのしばらくですからいいですか?
B: もちろん、どうぞ。
A: ご理解をどうも。
-- 日本人同士で確認し合う --
A: お待ち頂いてありがとうございました。
相手がついてきているか確認するフレーズ
シンプルに「Do you understand?」と聞いてもいいですが、口調や状況によっては相手の理解力を疑っているような上から目線のニュアンスになるので要注意。その危険を避けるには以下の表現が便利です。
複雑な話や、聞き手にとって新しい情報を伝える状況で特に使える。「with」という単純な前置詞を活用しており、2-12 の「Are you following me?」より、ややカジュアル。「Are you following me?」と同じく、複雑な話や、聞き手にとって新しい情報を伝える状況で特に使える。
相手が話の内容を理解しているか確認するフレーズ(1)
相手の理解を確かめたい時に「make sense」という言葉を使うことがあります。「意味をなす」とか「道理が通っている」といった意味です。
これもまた「Do you understand?」で代用できますが、もし相手が理解していなかった場合、相手の理解力不足に責任がある、というニュアンスがあります。それに対して「make sense」は自分の説明やトピックの複雑さに問題があるかもしれないニュアンスとなるので丁寧で無難です。
この言葉を使った典型的な質問は次の2つです。
(直訳:私の言っていること、意味をなしますか?)
(直訳:それ(その説明)は、意味をなしますか?)2-14 と 2-15 のフレーズにはニュアンスに微妙な違いがある。
「Am I making sense?」は、話者であるあなたにフォーカス。あなたは自分の説明や英語にいまいち自信がない。
「Does that make sense?」は、あなたの発言内容にフォーカス。説明している内容やコンセプトなどが複雑すぎて、相手には難しいのでないかと感じている。
このニュアンスの違いの感じ方は人によって異なることもあり、どちらの言い方も両方のニュアンスの意味で使うこともある。だが、特に「Am I making sense?」を多用しすぎると、自信がない人というイメージが定着する可能性が高いので要注意。
相手が話の内容を理解しているか確認するフレーズ(2)
こちらはカジュアルな言い方。使わない方が無難かもしれませんが、耳にすることはあるはずなので紹介しておきます。
2-16、2-17 のフレーズを使うのを避けた方が無難である理由は、スラング的に使われることも多いからです。
「Do you」の「Do」を省略して使う事が多い。様々なニュアンスで使われますが、人によっては合いの手のように、ひっきりなしに使うことがあります。その場合は日本語のニュアンスで言うと「わかるでしょ、ね?」のような意味です。
あなたが相手の理解を確認するつもりでこの2つの表現を使っているのに、あまり頻繁に使うとスラングの「ね?」のような印象になってしまう可能性もあります。
相手の理解に問題がありそうなので、別の言い方で再度説明する際に使えるフレーズには「What I'm trying to say is that...」「What I mean is that...」などがありますが、これは次の「CHAPTER 3 時間稼ぎと言い直し」で紹介します。