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CHAPTER 3 時間稼ぎと言い直し

言葉がとっさに出てこない時に時間を稼ぐフレーズ、うまく言えなかったことを言い直す際のフレーズ、そして時間稼ぎに使える前置きのフレーズを紹介します。

目次

CULTURAL TIPS

英語でのコミュニケーションでは沈黙を避けることが大切だ。多くの文化圏において沈黙を許容する度合いが低いため、低い方に合わせておいた方が無難だからだ。

※ 沈黙を嫌う文化圏・国の代表は、アメリカ、オーストラリア、スペイン、ラテンアメリカなど。沈黙が多いのは日本、韓国、ベトナム。中程度がドイツとされている。

許容度の低い文化圏では、個人同士の会話でも沈黙が少しでも続くと気まずい雰囲気になったり、あなたがその会話や相手に無関心であると勘違いされがちだ。

会議においても、考えをまとめようと口を開くまでにほんの一瞬だけ時間をとったつもりなのに、他の参加者を無用に不安にさせたり、議論に積極的に参加する気がないのかと疑われかねない。

また、会議中の沈黙は否定的なメッセージと解釈される危険もある。例えばビジネス交渉の場では、沈黙は交渉相手を威圧したり、相手を不安にさせて先に情報開示させるための戦術として使われる。

日本人同士のコミュニケーションにおいては沈黙は必ずしもネガティブに捉えられるものではない。ハイコンテクストの文化なので、わざわざ言語化しなくてもコミュニケーションが成立する部分が大きいからだ。

沈黙は金、以心伝心、などの表現が昔からあるように沈黙は時には望ましいもの、価値のあるものとさえ考えられている。だが残念ながら、グローバル環境の英語会議においては沈黙は悪という前提をとりあえず持っておいた方がいい。では具体的にはどうしたらいいのか。

何でもいいから、2.5秒以内に口にすることを目安にする。

細かい数字だが、沈黙が3秒以上続くと、沈黙許容度の低い文化圏においては社交会話においても気まずい雰囲気になったり、「どうしたのだろう?」といぶかられたりしがちだからだ。

会議で質問されてとっさに答えられない。単語も文章も英語で思い浮かばない。それどころか、日本語でだって答えられないような質問であっても、何でもいいから2.5秒以内に口にする習慣をつけよう。

全フレーズ

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時間稼ぎの言葉

話を振られたり質問をされた直後に反射的に使える言葉を覚えましょう。

3-1Uhh... / Umm... / Well... / Let me see...え~... / え~... / え~... / そうですね~...
3-2Give me a second... / Give me a sec...ちょっと待ってください。「sec」は「second」の簡略語。
3-1のフレーズより、さらに時間が欲しい時に使える表現。
3-3Hang on...ちょっと待ってください。
3-4Hold on...ちょっと待ってください。
3-5Let me think...考えさせてください。あなたが答えるまでに少し時間をとるかもしれない、と他の参加者に感じさせたい時に使える。

「Let me think...」と言ったら、実際に考えている様子を顔つきやボディランゲージで示すと良い。典型的なボディランゲージとしては、片手を軽く頬や顎にあてたり、視線を上に向けるなど。ちなみに、両腕を組んで考え込むのは警戒心や敵対心のジェスチャーと受け取られやすいので避けよう。

単語やぴったりの言い方が思い出せない時に使えるフレーズ

3-6What's the word?なんて単語だったかなあ?
3-7It's on the tip of my tongue.もう少しで思い出しそうなんですが。「(be) on the tip of my tongue = (直訳)舌先にあって → もう少しで思い出しそう」

どう説明したらいいか悩んでいる時に使えるフレーズ

単語や表現が思い出せないというより、どういう方向から説明したらいいか考えあぐねている状況を伝えたい状況で使うフレーズです。

3-8How can I explain this?どう説明したらいいでしょうかねえ?
3-9There's something I need to say. I'm just trying to find the right words.言う必要のあることがあるんです。正しい言葉を見つけようとしているだけなんです。ずいぶん時間を取ってしまったが、どうしても言葉が出てこない時は、このように前向きな姿勢を示し、他の参加者の興味や関心をかきたてることもできる。

言い直しのフレーズ

時間稼ぎの言葉で急場をしのぎつつ、とにかく話し始める訳ですが、「UNIT 1 会話を修復するフレーズ」でお伝えした通り、完璧な英文へのこだわりは捨てる必要があります。そうしないと会議の早いペースに乗っていけません。

思いついた文でとにかく話し始め、必要なら言葉を切って新たに言い直す。文法上の細かい間違いに気づいても、それをいちいち言い直すのはやめましょう。普通、誰もそんなことは気にしていません。

ここで言う「文法上の細かい間違い」とは、主に三単現のS、時制、名詞の単数/複数のミスです。冠詞/定冠詞の間違いもほぼ気にする必要はないですが、特定の何か、共通認識のある何かにつけるべき「the」に関しては、できれば注意したいです。

まず次の2つの言い方のどちらかをとっさに言えるようにしましょう。

3-10I mean...つまり... / 私が言いたいのは...あとには完全文がくる。
3-11What I mean is (that)...私が言いたいのは...あとには完全文がくる。
3-12What I'm trying to say is that...私が言おうと試みているのは...あとには完全文がくる。自分の言い方のせいで、うまく伝わっていないと感じた時や、相手が怪訝そうな表情の時は「I mean...」「What I mean is (that)...」以外に、「What I'm trying to say is that...」の表現も使える。

「trying」を加えることで不十分な(話し手の私自身も満足できない)説明かもしれないが、私が言おうと試みていることを理解するよう努めて頂きたいという気持ちが出る。

では、3-10、3-11、3-12 の表現の後に「it's just a matter of time.(単に時間の問題だということです / 遅かれ早かれ、そういうことになる)」という文を続けて言ってみましょう。

3-13I mean... it's just a matter of time.つまり... それは単に時間の問題なんです。
3-14What I mean is (that) it's just a matter of time.私が言いたいのは、それは単に時間の問題だということです。
3-15What I'm trying to say is that... it's just a matter of time.私が言おうと試みているのは...それは単に時間の問題だということです。
3-16I said it wrong...言い間違えました「言い間違えました」とわざわざ言いたいならばこのフレーズが使える。

前置きの言葉で時間稼ぎをする

前置きに使われる言葉をいくつか紹介しておきます。ここで前置きの言葉というのは、文の出だしに一言付け加えて相手に心の準備をさせる切り出しの文句のことを言います。

本来は時間稼ぎの言葉ではないですが、時間稼ぎにも使えるので重宝するかも知れません。

CULTURAL TIPS

英語は日本語に比べて直接的な言語なのでコミュニケーションもストレートだと勘違いされがちだ。確かに英語には敬語もないし、日本語でのコミュニケーションに比べれば、遠まわしな物言いをすることも少ない。

だが英語でも、相手の立場や状況を考慮する丁寧な言葉遣いや、ワンクッション置いて丁寧さを出す言い方が色々とある。まともなビジネスパーソンであれば、そうした言葉を巧みに使い分けて、コミュニケーションを取るものだ。

そして有り難いことに、ワンクッション置くための言葉は時間稼ぎの言葉としても活用できる。

ストレートさをやわらげるクッション言葉としての前置き

3-17I was thinking (that)...(~と)考えてたんですが...「thinking...」の後に来る内容を、いきなり口にするよりも「考えてたんですが...」と前置きすることで、相手はいったい何を言い出されるのだろうと感じて、心の準備ができる。

「How about~?」などと同様、提案を述べる時にも使える。「How about~?」が単刀直入なのに比べ「thinking」は柔らかい印象。
3-18I was thinking that... maybe we should reconsider our plan.我々の計画をたぶん考え直すべきではと、考えてたんですが...
3-19I was thinking... Why don't we reconsider our plan?考えていたんですが...我々の計画を考え直してはどうでしょうか?「I was thinking...」と語尾を延ばす感じで、そこで一旦切って新たなセンテンスで始めてもいい。それで前置きの役目は十分果たしたことになる。(この場合は「I was thinking that」の「that」は省略するのが英語ネイティブなら自然だが、あなたが自分で使う時にはそこまで気にする必要もない。)
3-20I was wondering if...ちょっと思っていたんですけど~というのは(どうでしょう)...「I was thinking (that)...」と比べると、気遣いや遠慮をより強く示した言い方となる。だから、確固とした意見や主張を述べる時には使わない方がいい。
3-21I was wondering if it's a good idea to transfer this responsibility to someone else.この責務を誰か別の人間に移す方が良いのではないかとちょっと思っていたのですが(どうでしょう)。
3-22I was wondering... How about transferring this responsibility to someone else?ちょっと思っていたんですけど... この責務を誰か別の人間に移すというのはどうでしょうか?「I was thinking」と同様、「I was wondering...」 と語尾を延ばす感じで、そこで一旦切って新たなセンテンスで始めてもいい。(この場合「if」は言わないのが英語ネイティブなら自然だが、あなたが自分で使う時にはそこまで気にする必要もない。)
3-23I was wondering if you could help me.手を貸して頂けないかと思っていたんですが。→ 構わなければ手を貸して頂けますか?「I was wondering if...」は、丁寧に依頼や頼み事をする際にも使える。

時間稼ぎの言葉として使えるその他の前置き

「Here's the thing.」は、何かを説明する時や要約する時の前置きに使います。「Here's」は「Here is」の短縮形。

日本語にしにくいですが「ポイントはですね...」「つまりこれはこういうことなんです...」「ここが大切なんですけど....」「ここが問題なんですが...」といった意味で使われます。ちょっと面倒なこと、困ったことなどがあって、それを説明する時に使われることが多い。

3-24Here's the thing.ポイントはですね...
3-25Here's the thing. We're no longer able to complete this project within our budget.問題はですねえ...予算内でこのプロジェクトを完成することが、もはや出来なくなっているんですよ。
3-26The thing is that...問題はですね...「Here's the thing.」のバリエーションで、意味やニュアンスは同じ。
3-27The thing is that we're no longer able to complete this project within our budget.問題はですねえ...予算内でこのプロジェクトを完成することが、もはや出来なくなっているんですよ。

以上、時間稼ぎと言い直しの表現を見てきました。

答えにくい質問をされた時に返すフレーズも時間稼ぎの一つと考えられないこともないですが、それは「CHAPTER 10 提案・解決案提示・理由を述べるフレーズ」で紹介します。

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