CHAPTER 1 さえぎって質問する
会議の英語を初めて取り組む方は、【はじめに】会議の英語の目的、使い方をご確認ください。
目次
CULTURAL TIPS
私たち日本人にとって「人の話をさえぎる」ことは非常に失礼な行為である。しかし英語のコミュニケーションにおいてはそこまで失礼な行為ではない。もちろん、英語のコミュニケーションでも人の話はちゃんと最後まで聞くべきだという考え方もあるにはあるが、日本人はもっとさえぎってしまって良い感覚でいた方がバランスが取れる。
特にビジネス上の会話では、理解できていないのに話をさえぎって質問しないことは、相手に失礼であると考えた方がいい。(社交会話は正確な理解よりも、親身に耳を傾け合うことで得る良好な人間関係の方が大切な場合もある。そのため多少分からなくてもさえぎらない方が良いこともある)
会議においてもさえぎって質問しない限り「あなたは議論を理解している」と見なされるのが当然だ。
途中で議論の内容についていけなくなったせいで意見を言えないだけなのに、他の参加者は積極的に発言しないあなたに対して議題に興味がないのか、やる気がないのかなどと誤解しかねない。
ちなみに次のケースは、会議中であってもさえぎると失礼だと見なされるので注意が必要である。
- 新たな発言者が話し始めたとたん、すぐにさえぎる
- 発言者が言葉につまって考えている時に割って入って自分が話し始める
- 重要と思われない部分や知らない単語などをいちいちさえぎって質問する
全フレーズ
さえぎるジェスチャー・仕草
さえぎるのはジェスチャーだけで済むこともあります。自分に注意を引き付けられるなら何でもいいですが、例えば以下のようなジェスチャーがあります。
人差し指を立てて手を少し上げる
ただし立てた人差し指を左右に振らないこと。指を振ると「そうじゃないよ」とか「ダメダメ」と言う気持ちを表すジェスチャーになってしまう。チッ、チッと舌打ちを伴うことが多い。
表情で示す
口を少し開けて息をさっと吸い込んで、いかにも話すぞという姿勢を見せる。(数人くらいまでなら使えるテクニック)
さえぎる定番フレーズ
質問するためにさえぎる時に使います。聞き取れなかった時、単語や文の意味が分からなかった時、内容への質問がある時のどの場合でも使えます。定番フレーズから3つ紹介しておきます。
聞き取れなかった時、意味が分からなかった時のフレーズ(1)
通常、相手の話の最後の部分に対して聞き直している質問だと解釈されます。相手が一言しか言っていないのなら、その一言全体となります。
「Sorry to interrupt.」や「Excuse me...」などのフレーズでさえぎる段階を飛ばして、ジェスチャーとともにいきなり、これらのフレーズで質問してもいいです。
聞き取れなかった時、意味が分からなかった時のフレーズ(2)
今、聞いたばかりの最後の(1つか2つの)センテンスが分からない時に使います。分からない部分の範囲を狭く示し、相手が答えやすくできます。
別の言葉で言い換えを求めるフレーズ
難解な単語や表現はいくら繰り返してもらっても意味が分かりません。別の言葉で言い直してもらいたい時に使えます。
似た言葉に「paraphrase」があります。これは人の言葉を自分がより平易に言い換えること。
聞き取れなかった時、意味が分からなかった時のフレーズ(3)
センテンスの一部や一語、一つの表現が分からない時に使います。分からない部分をさらに狭い範囲で特定して的確に答えてもらえる定番フレーズを2つ紹介します。
疑問詞を使ってピンポイントで聞き返す
分からなかった言葉を「what, what + 名詞」「where, which + 名詞」「who」などに置き換えて聞き返す。非常に手軽な方法だ。ややカジュアルな響きがある。
注意点
疑問詞の部分を発音する際は、声の調子を柔らかく保つこと。強い調子、驚いた調子、とがめるような調子だと「とんでもない!」と言っているようにも聞こえてしまう。
具体例
「Can you please contact Mr. Pousette-Dart?」と依頼されて名前が聞き取れず「You want me to contact WHO!?」と質問したが、WHO の声の調子が少しきつくなってしまった。
そうすると「(私に)誰にコンタクトして欲しいのですか?」と質問するつもりが、「●●氏にコンタクトしろなんて、とんでもない!」「●●氏だなんてやめてくれ!」というニュアンスに取られてしまいかねない。
疑問詞を使ってピンポイントで聞き返す方法を実際の会話例で聞いてみよう。最初はなるべくテキストを見ずに音から入ろう。
B: Excuse me, if they're not following what?
A: The expected protocols.
B: What do "protocols" mean?A: 当然期待されるプロトコル(ビジネスや外交上の手順・一定の形式)に従わなければ彼らは仕事を失いますね。(客がいなくなりますね)
B: すいません、彼らが何に従わなければですって?
A: 当然期待されるプロトコルです。
B: プロトコルってどういう意味ですか?「if they're not following what?」と、分からなかった部分をまず特定して聞き、次に「What do "protocols" mean?」 と 1-16「What does "XYZ" mean?」のフレーズでその単語の意味をさらに聞いています。
B: Excuse me, we must have what plan?A: 危機管理プロセスの一環として、緊急時対応プランを用意しないといけません。
B: すいません、何のプランですって?「contingency plan」という言葉のうち「plan」の部分は分かったので「what plan?」と聞いています。
B: You want me to contact who of which company?A: アドフニツク・インフォ・コンシューマブルズのシャンムガラトナムさんにコンタクトしてちょうだい。
B: どこの会社の誰にコンタクトして欲しいって?このように分からない部分が2ヶ所以上あっても相手の口にした文をそのまま使って質問できるので便利です。
話の途中から分からなくなった時のフレーズ
話についていったが、 あるところから分からなくなった時に使います。躊躇していると迷路に入り込んでしまうので、収拾がつかなくなる前に早めにさえぎりましょう。
1-21では相手の論議にはおそらく2つの parts しかない状況。一方は分かったが、その後のもう一つの部分が分からなくなった。
1-22は相手の論議には3つ以上の parts があり、自分は xyz の部分までは分かった。そこから先が分からなくなった。
ゆっくり話すように依頼するフレーズ
英語ネイティブの方が多い会議だと、あなたが外国人であることは普通はまったく考慮してくれません。そうした状況で早口のネイティブたちをさえぎって質問するのは勇気もいりますが、これを乗り越えないと始まりません。
会議のなるべく最初の方に何度か質問するのも一つの戦術です。この際、実は分かっているのにあえて質問するのも良いです。英語ネイティブじゃない参加者がいることを(改めて)意識させるのに役立つことがあります。
英語が不自由なことを謝るのは避けましょう。その必要もありません。ちなみにインド出身者に比較的多いケースですが、発話の速さに加えて強い訛りと独特の語彙や表現のために、英語ネイティブであっても理解しづらい英語を話すことがあります。
あなたがその人物にゆっくり話すように依頼すると、実は他の参加者も有り難いこともあるのです。
再度ゆっくり話すように依頼するフレーズ
一度頼んでも、そのうち元の早口に戻る可能性が大きい。何度もしつこく頼む必要があるかもしれない。