【はじめに】会議の英語の目的、使い方
教材の目的とフレーズのタイプ
フレーズのタイプは次の2つがあります。
タイプ1: そのまま使う決まり文句
→ あなたの発言中に割り込んでくる相手をけん制するのに使う。
こうした決まり文句はそのまま覚えて、とっさに口から出るようにしましょう。一つの事柄を言うのに複数のフレーズを紹介したり、ニュアンスが微妙に違うフレーズの場合もあります。
まずは自分が使いやすいフレーズを一つマスターすることをお勧めします。いくらニュアンスの違いを知っていても、そのフレーズが会議で瞬時に口から出てこないのであれば、何の役にも立たないからです。
タイプ2:応用するフレーズ
→ 数字の出所や由来を質問するのに使える。
▼レッスン内の例文
- Could you tell me where this January figure comes from?(この1月の数字は、どこから出てきたのか教えて頂けますか?)
- Could you tell me where that estimate comes from?(その見積はどこから出てきたのか教えて頂けますか?)
タイプ2のフレーズには、通常2つの例文を用意しています。学習者各人の仕事分野や会議の内容は当然異なります。まず例文を文字を見ずにすらすらと自分の言葉として言えるようになったら、次は自分の状況に合った単語やチャンクを使って練習してください。
例えば、上の例文では「this January figure(この1月の数字)」「that estimate(その見積り)」というチャンクが使われていますが、これはあくまで参考用です。この2つのチャンクがそのまま、あるいは中身の単語や数字などを変えることで役立つのであれば、もちろんそれでも構いません。
しかし、それに加えて、あなた自身が業務で使っている単語やチャンク、使う可能性のある言葉を、架空の状況でもいいので想像しながら思いつく限りたくさん使って、口に出して練習して頂きたいということです。
与えられた例文を音読したり暗記するだけで良しとする受け身の学習では、会議中にとっさに応用が出来るようにはなりません。
教材内のチャンクを再活用してパターンプラクティスで練習する例
タイプ2のフレーズでは構文パターンを刷り込むために、また、とっさに使える手持ちのチャンクを増やすために、練習の一環としてパターンプラクティスも行えます。
例)CHAPTER 8 で次のような質問パターンが紹介されています。
例文は以下の2つです。
この例文のみだけでなく「I have a question about what you said about...」の後に続けられるチャンクは、教材中の至るところに載っています。例えば、以下の例文の下線部分を使うことができます。
【重要】英語の会議文化
英語の会議に有意義に参加するには、会議中に役立つフレーズを学ぶだけでは不十分です。日本における会議とグローバル環境での英語会議は、話し合いのスタイルや各人に期待される役割が大きく異なるからです。ひとことで言えば、会議の文化が違うのです。
野球型とサッカー型
この違いをスポーツで例えると、日本の会議が野球、グローバル環境での会議はサッカーだと言えます。
野球(日本の会議)
バッターが一人ひとり順番に登場し、守備側のプレイヤーは自分に飛んできたボールを処理する。
秩序があり、ペースが遅いスポーツと言える。
サッカー(英語の会議)
一人のプレイヤーの動きをもとに他プレイヤーが動き、ボールをパスしたり奪い合ったりして瞬時にゲームが展開する。
どちらにボールが飛ぶか分からず、素早く反応して臨機応変に動くスキルが必要。無秩序でペースの早いスポーツと言える。
日本の会議では野球のように各人の発言を皆が傾聴し、最後には落ち着くところに落ち着きます。全体の流れがどうなるか、会議の着地点もある程度は予測ができます。
英語の会議ではサッカー同様、想定外の多用な意見(動き)が飛び出してくることが多く、日本人から見ると互いにさえぎりあって自己主張するケンカのような雰囲気になることもあります。そうした一種の混沌とした流れの中から、多種多様な意見のシナジー効果によって新しい方向性が突如生まれることもあります。
英語が話せるだけでは不十分
このようなサッカー型の会議においては、自分からボールを奪いに行く、つまり積極的に注目を引いて自分が話す機会を作らないと、たとえあなたが事前に考えた意見を持っていても宝の持ち腐れになってしまいます。
逆に思いつきのような意見であってもタイムリーに発せられれば、会議の流れがガラリと変わったり、参加者のインスピレーションになって貢献することもあります。
たとえ英語を自由に話せても、それだけではグローバルな人材とは言えません。いくら英語が流暢でも、こうした文化の違いを把握して会議に臨む際のマインドセットを調整しなければ、ほとんど意見を言わずに会議が終わってしまいます。
逆に英語の面ではまだまだ欠ける部分が多くても、会議文化の違いに柔軟に対応し、自身の発言内容はもとより、他者の発言に対する反応の仕方なども含めた会議中の態度から、他の参加者を巻き込む(engage)ことができれば、しっかりと貢献できます。
この会議の英語では、単に役立つフレーズを紹介するだけでなく、そうしたフレーズの必要性をグローバル会議の文化と日本文化との対比の中において解説し、学習者が英語の会議に積極的に参加していく後押しを行います。
会議の英語を学ぶことは「英語 + 文化」をワンセットで学ぶものだと考えてください。
会議の英語の構成
会話を修復するフレーズ
壊れかかった会話を修復するためのフレーズを5つのチャプターに分けて紹介します。
会議での議論そのものに直結するフレーズではなくとも、滞りなく英語でのコミュニケーションを進めるには、なくてはならない機能を持つフレーズばかりです。
なぜ修復力が重要なのか
現実の会話は、教科書や英語教材で見るような間違いのない完璧な文ばかりではありません。英語ネイティブ同士の会話であっても
- 曖昧さを正すために言い換えたり
- 言葉を間違えて言い直したり
- 不必要に繰り返したり
- 途中から構文がよじれて文法的につじつまが合わない文でもそのまま話を進めたり
議論で使うフレーズ
議論に直結するフレーズを紹介します。機能別に大きく6つのチャプターに分け、それ以外のものは「議論で役立つフレーズ」として最後のチャプターにまとめてあります。