スラッシュリーディング - 第二言語習得研究の記憶システムと効果的な英語学習のやり方

スラッシュリーディング - 第二言語習得研究の記憶システムと効果的な英語学習のやり方

英語学習において、記憶システムの仕組みを意識して活用したことはありますか?記憶の特性を理解して活かすことは、学習に役立ちます。

なぜなら「学習することは記憶することである」と言っても過言ではないからです。

文法規則や単語の意味を理解し、暗記することは大切ですが、ただ闇雲に取り組んでいても、英語を使いこなす能力はなかなか身につきません。

それぞれの学習方法がどのような種類の記憶に支えられているものなのか、その学習はどのような役割を持つのか、これらを理解して意識的に学習に取り組むことは、英語を「使える技能」として習得するための近道につながります。

パタプライングリッシュでは、人の脳内で言語活動がどのように行われているのかを研究する「第二言語習得研究 (SLA: Second Language Acquisition)」から、効率的な英語学習のやり方について解説します。

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今回は効果的に英語を学習していく上で重要な学習法「スラッシュリーディング」と人間の記憶システムについてご紹介します。

スラッシュリーディングとは

スラッシュリーディングは、英文情報を理解することを主眼としています。

スラッシュリーディングのやり方

英語の文章を文頭から、情報単位ごとにスラッシュ(/)を入れながら読み進みます。

初めから、文の終わりまでを読み進んでしまうのではなく、前から少しずつ、意味の取れる箇所でスラッシュを入れていきます。

スラッシュを入れる位置は学習者自身が意味が取れたところで構いません。

初心者の場合はなるべく短い情報単位でスラッシュを入れて、慣れるに従って複数のフレーズを組み合わせた長い情報単位でスラッシュを入れていくとよいでしょう。

スラッシュリーディングの効果

スラッシュリーディングは、情報単位に分けて英文を文頭から処理していくことで、長く複雑な文も理解しやすくなります。

例えば、スラッシュリーディングを用いると、以下のように区切ることができます。

Is it true / that this year's rainy season / began / on the earliest dates on record / in some parts of Japan?

このように、特に初心者の場合にはフレーズごと(5 ± 2語程度)に文を区切ります。スラッシュを入れる位置の目安としては、前置詞や接続詞、関係代名詞の前がスムーズです。

日本人の英語学習に有効

スラッシュリーディングは母国語と言語構造の異なる外国語を習得に非常に有効です。つまり、日本人にとって、日本語と大きく構造が異なる英語を学習する上で有効な学習方法と言えます。

日本人は英文を理解する際に、英語の構文構造から日本語の構造を頭の中で再構築しがちですが、この構造変換は英文理解の過程に遅延を引き起こし、リーディングやリスニングに支障をきたしてしまいます。

これは英文を元の語順のまま理解する能力を身に付ければ解決できます。スラッシュリーディングはこの能力獲得の訓練法であると言えます。

リスニングに応用した学習法

スラッシュリーディングは主にリーディングで用いられますが、リスニングに応用した学習法として「区切り聞き」があります。

英文を読む際だけでなく聞き取る際にも、文頭から少しずつ、和訳せずに英語のままで理解できることは、実際の英会話において重要な力になります。

スラッシュリーディングでは「文の内容や意味を理解すること」を重視した区切りとなり、発話する際のリズムに直接的には関わらないカタマリであると言えます。

発話のリズムを重視したチャンクリーディングという学習法もあります。詳しい説明は「チャンクリーディング - 第二言語習得研究の記憶システムと効果的な英語学習のやり方」の記事をご確認ください。

スラッシュリーディングの目的

スラッシュリーディングの目的は「速く読むこと」です。ではなぜ、英語学習には速読が必要なのでしょうか?

速読の必要性

まず考えられる速読のメリットは英文をすらすらと読めるようになることですが、それだけではありません。

英文の意味や内容の理解においても、スピードが重要な要素となります。言語を理解するには、情報の受け手が情報を総体として認識する必要があり、その条件の1つとしてスピードが挙げられるのです。

英文は複数の単語が連なって1つの意味を形成しています。それらを総体として理解できなければ、英文の意味を掴むことは難しくなります。

つまり、文章を一気に読む必要があるということです。

スラッシュリーディングで速読ができる理由

スラッシュリーディングは、スラッシュを手がかりにすることで、英文を一気に読むために不要な「返り読み」からの脱却が可能になります。

返り読みとは、英文を頭の中で日本語の語順に並べ替えて理解することで、日本人英語学習者には多くみられる習慣です。これでは、英文を流れのままに読み進めることはできません。

冒頭の文を用いて、返り読みとスラッシュリーディングによる解釈を比較すると、以下のようになります。

①Is it true / ②that this year's rainy season / ③began / ④on the earliest dates on record / ⑤in some parts of Japan?

【返り読みによる解釈】
②今年の梅雨は → ⑤日本の一部の地域で → ④記録的に最も早く → ③始まった → ①それは本当ですか

【スラッシュリーディングによる解釈】
①それは本当ですか → ②今年の梅雨は → ③始まった → ④記録的に最も早く → ⑤日本の一部の地域で

返り読み訳では日本語の語順に合わせるために英文を複雑に行き来しながら理解しています。対してスラッシュリーディングでは、英文の流れに沿ってスムーズに理解していることが分かります。

つまり、文のパーツを頭の中で入れ替えずに元の語順のまま理解するために、情報単位ごとの区切りが役立つのです。

頭の中で語順を並べ替える必要がないため、読解効率が飛躍的に向上します。

早く、正しく、理解できる

この手法では意味のカタマリごとに解釈するので、短いパーツに集中でき、文中のパーツを見落とさずに正しい理解にもつながります。

また、一文が長い文章でも、短い意味のカタマリの集合であることが分かるため、どんな長さの文でも臆せずに読み進めることができます。

瞬時に理解できる

スラッシュリーディングを活用して速読を身につけることで、言葉の意味を瞬時に捉えて理解する力がつきます。

これは実際の会話において、その場で相手の話を理解し「とっさに話す」ためにも必要な力です。

記憶の仕組みとの関わり

なぜ「速く読むこと」が必要なのか、人間の記憶の仕組みからも重要性が裏付けられます。

人間の脳には、短期記憶と長期記憶があります。その中でも、速読は短期記憶の一種であるワーキングメモリを効率的に使うことに寄与します。

ワーキングメモリとは

ワーキングメモリは「作業記憶」「作動記憶」とも言い換えられます。いわば「脳のメモ帳」「脳の作業机」といった役割を果たし、感覚刺激として新たに入ってきた情報を「一時的に保持」します。

一時保持と並行して、長期記憶にある情報を検索・参照し、情報を加工して理解に必要な「処理(操作)」を行います。

この「保持」と「処理」がワーキングメモリの役割です。

ワーキングメモリの容量に空きを作る

日本語なら長い文章でも聞いたことを覚えておけるのに、普段聞きなれない言語や数字の羅列では、聞いた内容をすぐに忘れてしまうことがありませんか?

この現象にもワーキングメモリが関係しています。

ワーキングメモリには、覚えられるアイテム数と保持できる時間に限りがあります。そのため言語の習得には「いかにワーキングメモリの容量に空きを作るか」が課題になります。

スラッシュリーディングを活用した速読を身につけることで、英文を短い単位で認識して理解できるため、ワーキングメモリの使用容量を減らすことができます。

最後に

スラッシュリーディングは学校教育でも用いられることが多く、すでに経験がある方も多いのではないでしょうか?

スラッシュリーディングを活用した速読を身につけることで、ワーキングメモリの使用容量を減らした効率的な読解が可能になります。これは同時通訳の訓練でも用いられている方法です。

英語学習には、さまざまな手法があり、それらはいずれも脳の特性や根拠に基づいて編み出されています。しかし、その目的を知らないままに用いても十分な効果は得られません。

和訳せずに英語のまま理解できる訓練として、ぜひスラッシュリーディングを試してみてください。

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参考文献