意味記憶 - 第二言語習得研究の記憶システムと効果的な英語学習のやり方

意味記憶 - 第二言語習得研究の記憶システムと効果的な英語学習のやり方

英語学習において、記憶システムの仕組みを意識して活用したことはありますか?記憶の特性を理解して活かすことは、学習に役立ちます。

なぜなら「学習することは記憶することである」と言っても過言ではないからです。

文法規則や単語の意味を理解し、暗記することは大切ですが、ただ闇雲に取り組んでいても、英語を使いこなす能力はなかなか身につきません。

それぞれの学習方法がどのような種類の記憶に支えられているものなのか、その学習はどのような役割を持つのか、これらを理解して意識的に学習に取り組むことは、英語を「使える技能」として習得するための近道につながります。

パタプライングリッシュでは、人の脳内で言語活動がどのように行われているのかを研究する「第二言語習得研究 (SLA: Second Language Acquisition)」から、効率的な英語学習のやり方について解説します。

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今回は人間の記憶システムの「意味記憶」にスポットを当てて、英語学習との関連性についてご紹介します。

意味記憶とは

人間の記憶システムと意味記憶の図解

意味記憶とは「いつどこで覚えたかは分からない」「覚えているより知っていることに近い」など事実に関する記憶のことです。

例えば「1日は24時間」は、大人であれば誰でも知っている意味記憶の一つで、いわば知識です。自己の体験を通して記憶するものではなく、学習によって獲得される記憶です。

1日は24時間であることを知識と知っているのは意味記憶

意味記憶は10歳がピーク

10歳までの子供は、意味記憶がエピソード記憶に比べて優位であると言われています。

小さな子供は意味のない文字や内容でも記憶する能力が高いため、ひらがな、カタカナ、部首になるような漢字、掛け算九九を小学2年生までに習う理由もここにあります。

しかし、意味記憶は10歳頃をピークに低下していくと言われています。それを過ぎると意味記憶よりもエピソード記憶が優位になってきます。

これは、大人になるにつれて内容の意味や理解をする能力が高くなる分、無意味なものをただ暗記することができなくなってくるということです。

エピソード記憶との違い

意味記憶に対して、実際に体験したことなど特定の事象に基づいた情報に関する記憶を「エピソード記憶(自伝的記憶)」と言います。

「天気予報を確認せず急いで家を出たので、帰りに土砂降りにあってしまった」といった個人の体験に基づく記憶が当てはまります。

エピソード記憶について詳しくは「エピソード記憶 - 第二言語習得研究の記憶システムと効果的な英語学習のやり方」をご確認ください。

意味記憶とエピソード記憶は、人間の記憶システムの中の「長期記憶」の枠に分類されます。

意味記憶の具体例

「三人称単数現在形には-sをつける(三単現の-s)」は、英語学習をした人なら誰でも知っている、中学英語で学習する意味記憶の一つです。

三単現の-sは日本語にはない文法なので、授業で先生から「三人称単数現在形には-sをつけます。」と教わっても、最初は何のことか分からなかったはずです。

覚えたつもりでいても習慣がないため、ついついテストで-sをつけ忘れてしまった経験もあると思います。

意味記憶の獲得

個人の体験に基づくエピソード記憶の獲得はイメージしやすいかと思いますが、一般的な知識である意味記憶はどのように獲得されるのでしょうか。

意味記憶はエピソード記憶のように自我を介さない記憶です。そのため、学習が繰り返されることで記憶されます。

掛け算九九や漢字の書き方を覚えた時のことを思い出してみてください。練習問題を繰り返し解いたり、書く練習をした記憶があると思います。

学校の授業や自宅で反復学習をすることで、大人になっても当たり前のように知っている知識が意味記憶として定着したのです。

日本の学校教育で構築される記憶内容の多くが意味記憶に当てはまります。

机に向かって「勉強する」従来の学習スタイルが、意味記憶の獲得につながる学習方法、と言っても過言ではありません。

同じことを繰り返し学習することで意味記憶になる

意味記憶の獲得によってできること

英語学習で意味記憶を獲得すると、具体的にどのようなことができるようになるのでしょう。

英語学習で獲得できる意味記憶は、語彙や文法といったリーディングやライティングに必須な知識・情報です。つまりリーディングやライティングのスキルアップには意味記憶の獲得が不可欠です。

具体的には、

  • TOEICをはじめとするテストや試験で高得点が取れるようになる
  • 英文メールがスムーズに書けるようになる
  • 英語の資料や文章がすらすら読めるようになる

などができるようになります。

英語の意味記憶を多く獲得すれば「その場ですぐに使える」語彙力や文法力が身につく

獲得した意味記憶を活用する際、ワーキングメモリと呼ばれる短期記憶のシステムが使われます。

ワーキングメモリとは「理解、学習、推論など認知的課題の遂行中に情報を一時的に保持し操作するためのシステム」です。つまり、何かについて考える際に一時的に使う記憶システムということです。

ワーキングメモリは、長期記憶にある情報を「検索・参照」し、アウトプットに必要な情報を「処理」する働きをします。

テストで問題を解く際や、文章を書く際も、ワーキングメモリが脳内に保存された意味記憶から「検索・参照」を行い、必要な情報を「処理」することよって、正しい回答やライティングができるのです。

ワーキングメモリとは、脳の「メモ帳」の役割を果たす短期記憶である。感覚刺激として新たに入ってきた情報を一時的に保持し、並行して、長期記憶に保存された情報を検索・参照してくる。そして両方の情報を加工して必要な処理(操作)を行う。この「保持」と「処理」がワーキングメモリの役目である。
詳しい説明は「ワーキングメモリ - 第二言語習得研究の記憶システムと効果的な英語学習のやり方」の記事をご確認ください。

意味記憶を活かしたお勧め英語学習法

新たな意味記憶の獲得には、反復した学習または練習しかありません。したがって英語学習をする際も、この反復学習が欠かせません。

それでは具体的にどのような「学習」方法を用いれば良いのでしょうか?先ほど取り上げた「三単現の-s」を例に見てみましょう。

三単現の-sは中学1年生で習う英文法です。中学と高校で英語を学んだとしても、最低でも6年間は三単現の-sに触れざるを得ないことになります。

つまり6年間かけて反復学習、さらにアウトプットが行われて、三単現の-sは多くの方の「意味記憶」となったのです。

反復学習とアウトプットが重要

ここで注目したいのが、三単現の-sを学習した際に反復学習に加えてアウトプットが行われた、という点です。

ここで言う反復学習とは練習問題を解くといった学習、アウトプットは学んだ内容を活用して自分で例文を作成するといった学習を指します。

反復学習で知識をインプットさせ、ライティングでアウトプットを行うという学習法を用いると、新たに学んだ知識は意味記憶として定着しやすくなります。

言語を習得する際に行うアウトプットには、ライティングのほかに口に出して話すスピーキングがありますが、スピーキングは手続き記憶を獲得する際の手法となるので、ここでは使用しません。

意味記憶の反復学習とアウトプットは、机に向かって一人でできるため、比較的行いやすい学習方法です。学習の際は、ぜひ反復学習でのインプットとアウトプットをセットで行うようにしてみてください。

意味記憶の獲得には反復練習とアウトプットが重要

最後に

日本の英語教育やTOEICの勉強はどちらかと言うと、単語や文法をはじめとする意味記憶の獲得が中心です。

高校受験や大学受験に必要なスキルも意味記憶が中心ですし、社会人になってからもTOEICのスコアが重視されがちで、話すことが苦手な人が多いのも不思議ではありません。

しかし英語に関する意味記憶が豊富であれば、自身の記憶システムを最大限活用してリスニングやスピーキングのスキルを上げることは可能です。

意味記憶の性質を理解して、自分の英語スキルにはどの記憶システムが足りていないのか、他の記憶システムにも注目して学習してみてください。

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参考文献