英語独自の音声変化に着目
リスニングの効果的なトレーニング方法
当記事はビジネス英語スピーキング教材「パタプライングリッシュ」を利用することで、なぜスピーキング力を身につけることができるのか、科学的根拠を示しながら解説します。
「単語同士がリンキングされると途端に聞き取りが難しくなる」「重要な情報を聞き逃していないか不安…」そう感じた経験はありませんか?
とりわけビジネスシーンにおいては、相手の意図や感情を正確に受け取らなければなりません。ネイティブは会話の中で自然に「音声変化」を使うため、これを理解できなければビジネスチャンスをつかみ損ねてしまう可能性も…。
英語の音声変化を理解することは、リスニング、スピーキング、発音など英語力全体の向上にも繋がります。自然な発音で流暢な英語力があるという印象を与えられれば、ビジネスパートナーへの信頼感も高められます。
音声変化は日本人が英語学習で苦労する要因のひとつですが、音声変化を意識した発音の練習はリスニング力の向上に一定の効果があると報告されています。
“音変化と英語のリズムを意識した発音練習をすることにより、音変化を伴った単語の聴き取り能力が全般的に向上していることがわかる。”
出典:英語の聴解能力向上に効果的な音変化現象の発音指導
“大学生を対象に4か月間音変化を意識させた発音指導を実施すると、単語認識テストのリスニング正解率が同化、脱落、連結の順で高かったことを報告している。”
出典:音変化現象分類再考
本記事では、音声変化の基礎知識からビジネスシーンにおける重要性まで幅広く解説し、リスニングの効果的なトレーニング方法を紹介します。英語学習の効率を最大限に引き出すために、ぜひ参考にしてみてください。
英語の「音声変化」とは?
音声変化は話す際の「省エネ」のようなもので、自分の意思をより早く、より楽に相手に伝えるための工夫です。ネイティブは文章を1つ1つ区切って機械的に話すのではなく、単語を繋げたり省略することで自然な会話の流れを作ります。
「文字を見れば分かるのに聞き取れない」といった現象が起こるのは、音声変化によって作り出される音が教科書に書いてあるような発音記号通りの音とは少し異なるからです。
日本語にも似たような現象が見られます。例えば「東京駅」。「とうきょうえき」と1つ1つ区切って発音するのではなく、「とーきょーえき」と滑らかに繋げて発音することが一般的です。
「体育館」を「たいくかん」、「洗濯機」を「せんたっき」など、漢字をそのまま読んだ場合の発音と慣用的に使われている発音が異なる単語は、日本語にも多く存在します。
日本語を外国語として学習する人にとっても表記と音の変化を理解するのは非常に難しく、苦労するポイントのひとつとも言われています。
5つの音声変化パターン
ネイティブは会話の状況や感情に合わせて、無意識のうちに音声変化を使っています。英語には独特のリズムがあり、音声変化はそのリズムを作る上で重要な役割を果たします。英語の音声変化にはどのような種類があるのか、代表的な5つの例を挙げて見ていきましょう。
1. 連結(linking)
単語と単語が繋がって1つの単語のように発音される現象です。「子音+母音」という形ができるとよく起こります。(もちろん「母音+母音」「子音+子音」のリンキングも存在します。)
日本語には馴染みのない発音の仕方であることから、多くの学習者が苦戦するポイントになっています。他の音声変化より習得が難しいとされているため、より長期的な練習も必要です。
〈具体例〉
Please give me an update tomorrow morning.
I need it done by 3:00 pm tomorrow.
talk about this tomorrow
take a customer survey and find out what they want
2. 同化(assimilation)
隣り合う音が互いに影響し合い、発音が変化する現象です。前の単語の最後の音+後の単語の最初の音=別の音になる、といったイメージです。
〈具体例〉
I need you to work on the sales forecast.
Could you please
Would you mind talking about it?
I'm afraid I have to go now.
3. 脱落(elision)
ネイティブが話す速い英語を聞くと、文字通り書かれている全ての音が聞こえないことに気づきます。スペルにはあるのに実際は発音されない、または部分的に発音されなくなる、これが脱落と呼ばれる現象です。
前の単語の最後の音が破裂音(b,d,g,k,p,t)+後の単語の最初の音が子音=前の単語の最後の音が発音されない、といったパターンが代表的です。
〈具体例〉
Let me finish first.
Can you recommend a good place to eat?
stop by my office
It would be great if you could get back to me at your earliest convenience.
4. ら行化(flapping)
母音に挟まれた「t」や「d」の発音が「r」のような音に変化する現象のことで、特にアメリカ英語で顕著に見られる現象です。イギリス英語は「t」をクリアに発音するケースが多くみられます。
〈具体例〉
I'm considering providing incentives for better performance.
I have a completely different view on this matter.
I’m a little concerned about you.
poor employees get away with sub-par performances
5. 短縮(contraction)
2つの単語が結びつき通常の形から簡略化される現象で、発音も変化します。短縮は親しい間柄やカジュアルな場面でよく使われる傾向にあります。
〈具体例〉
I'm afraid I have to go now.
I can't help you.
I won’t be able to cover for you tomorrow.
what’s bothering her
音声変化を学ぶメリット
1. リスニング力の向上
〈ビジネスシーンにおける、よくあるお悩みポイント〉
ネイティブが話すスピードについていけず、会話の半分程度しか理解できない聞くことに集中してしまい、会議全体が相手のペースで進んでしまう
ネイティブは会話の中で頻繁に音声変化を使います。音声変化を理解することで教科書や単語帳で覚えた発音とのギャップを埋めることができ、ネイティブが話す速いスピードの英語にも対応できるようになります。
2. スピーキング力の向上
〈ビジネスシーンにおける、よくあるお悩みポイント〉
事前にテーマが分かっていれば話せるのに、質疑応答になると上手く反応できない細かいニュアンスが分からず、意図した内容が相手に伝わっているのか不安
音声変化をスムーズに行うことで単語と単語の繋がりが滑らかになり、流暢な英語を話せるようになります。音声変化にはニュアンスや感情を伝える役割もあるため、「なかなか上級者の壁を越えられない」と感じている人にとってはステップアップの突破口となる可能性も高いです。
3. 発音の矯正
〈ビジネスシーンにおける、よくあるお悩みポイント〉
正しく発音しているつもりなのにネイティブに聞き返され、会議の流れが止まってしまうカタカナ発音から脱却できない
ネイティブが話す自然な発音に近づけば、誤解を減らし、自分の考えや気持ちを正確に伝えられるようになります。自分の発音に自信を持てるようになることで会話も積極的になり、相手に好印象を与えられます。
ビジネスシーンにおける音声変化の重要性
1. 重要な情報を聞き逃すのを防ぎ、的確に対応できる
例えば“I wonder how they’re going to solve this issue.”という文章の場合、「going to」の音が「gonna」に短縮されることがあります。音声変化に慣れていないと急な音の変化に混乱してしまい、文全体の意味まで分からなくなってしまうケースも。
音声変化のパターンを知っておけば、重要な情報を聞き逃してしまったり、言葉に詰まる場面を回避できます。交渉事やプレゼンテーションで意見を求められた時も的確に対応できます。
2. 聞き返す頻度を減らし、会議やプレゼンを円滑に進める
ビジネスシーンにおいて時間は非常に貴重です。効率的なコミュニケーションが求められますが、聞き返しが多くなれば会議のテンポも遅くなってしまいます。
社内のミーティングならまだしも、国際会議やプレゼンテーションの場面では大きな問題になりかねません。話し手の意図を即座に把握し円滑に会議を進めるためにも、音声変化のパターンを知っておくことは非常に重要です。
3. 信頼関係を構築し、プロフェッショナルな印象を与える
発音が自然に近ければ近いほど「流暢な英語力がある」と判断されます。ビジネスパートナーにプロフェッショナルな印象を与えられれば、信頼感も高まるでしょう。
音声変化を理解するだけでなく、自分自身が使いこなせるようになることも大事です。ビジネス英語には「形式的な場面」と「カジュアルな場面」があり、特に軽い雑談などカジュアルな場面では音声変化を駆使した自然な話し方の方が好まれます。
音声変化に着目した効果的なトレーニング方法
リスニングの効果的なトレーニング方法と、それぞれのメリット・デメリットを紹介します。
1. ディクテーション
ディクテーションは、音声を聴きながら聞き取った単語やフレーズを書き取る練習方法です。映画、音楽、ニュースなど様々な素材を活用できるため、自分の嗜好に合せて教材を選べます。
特に連結や短縮が多い音声素材を使うと、どの部分で音声変化が起こっているのか敏感に察知できるようになり、聞き取れなかった部分を意識的に学ぶこともできます。スクリプトを確認して音声変化を理解し、再度聴き直してみるとより効果的です。
〈メリット〉
・音の変化やニュアンスを意識的に聞き取る習慣が身につく
・聞き取った内容を文字に起こす過程で、語彙や文法が自然に習得できる
〈デメリット〉
・文字に書き起こす作業が発生するため、時間と労力を要する
・スピーキング力への直接的な効果は低い
2. シャドーイング
シャドーイングは、ネイティブの音声を聴きながら、できるだけ同じスピードで後追いする練習方法です。
例えば"want to" が「wanna」に聞こえる部分を正確に再現するなど、音声変化を意識して取り組めば発音とリスニング力の両方が鍛えられます。
〈メリット〉
・リスニング力とスピーキング力が同時に鍛えられる
・自然な発音を習得し、自分の発音を改善できる
・ネイティブが話す時のリズムやテンポも体得できる
〈デメリット〉
・誤った発音が定着してしまう可能性がある
・スピーキング力のみの向上に偏る可能性がある
・自分で文を構成する力や応用力が身につかない
3.リピーティング
リピーティングは、音声を聴いた後に一時停止して、その内容をできるだけ正確に繰り返す練習方法です。音を追いかけていくだけのシャドーイングとは異なり、聞こえた音声を一時的に記憶し、頭の中で文を作ってから発話します。
〈メリット〉
・リスニング力、スピーキング力、発音の向上が期待できる
・自分で文を構成できるようになり、応用力も鍛えられる
・どんな場面でどう使われるかも理解できるようになり、実践力が身につく
・集中力と記憶力を高めるトレーニングにもなる
〈デメリット〉
・初心者にとっては難易度が高い
・難しすぎず簡単すぎない、自分に合ったレベルのリスニング素材を選ぶ必要がある
英語学習者が陥りがちな3つのミス
1. 単語ごとに発音を学ぼうとする
日本語で話す時を思い出してみてください。頭の中で1つ1つ単語を並べてから文章を作っていては話し出すまでにあまりにも時間がかかってしまい、スムーズにやり取りできません。
英語も同じで、ネイティブは「チャンク単位」で言葉を繋ぎながら会話を展開します。チャンクとは通常2〜8語程度からなる意味を形成する言葉のカタマリです。
例えば"I need you to work on the sales forecast."の文は、「I need you to」「work on」「the sales forecast」の3つのチャンクからできています。
「I」「need」「you」といったように単語ごとに発音を学んでいると、「need you」の部分で起こる音声変化(同化)を聞いた時に混乱し、文章全体の意味を把握する前に思考が止まってしまいます。
単語を発音記号の通りに1つずつ学ぶのではなく、「チャンクの中で単語がどのように繋がって発音されるのか」に意識を向けることが重要です。
2. 書かれた文字に頼りすぎる
単語に当てがわれた発音記号通りの発音と、実際の会話で聞く発音は異なります。脱落や短縮といった音声変化の影響による発音の変化にとまどい、会話全体の理解も阻害されてしまいます。
"I won’t be able to cover for you tomorrow."という文を文字で見れば、「will not」の短縮形が使われていることは一目瞭然です。ところが音声だと「ウォン」に聞こえるため、"want"と混同してしまう人もいます。
文字を読むことは「視覚的」な情報処理であるのに対し、音声を聞くことは「聴覚的」な情報処理になり、脳内で異なる経路を辿ります。書かれた文字に頼りすぎてしまうと聴覚的な処理が十分に鍛えられず、リスニング力が伸びにくくなるのです。
3. 繰り返し聞かない
冠詞や前置詞、三単現のsや時制といった細かい部分は、リスニング素材の音声を1〜2回聞いただけでは全て理解できません。同じ素材を繰り返し聞くことで、最初は聞き取れなかった部分を徐々に理解できるようになります。
繰り返し何度も同じ文章を聞けば、ネイティブが話すスピードにも慣れ、特定の表現や言い回しも自然に覚えられます。
リスニング素材の音声をただ繰り返し聞くだけでなく、文章の内容を把握し、できるだけ具体的なシーンを思い浮かべるのも非常に有効です。この状態で発話練習を繰り返せば、リスニング力だけでなくスピーキング力の向上も期待できます。
まとめ
チャンク単位で聞き取るトレーニングが効果的
単語単位で聞き取る練習も大切ですが、音声変化を効果的に学習するためにはチャンク単位で聞き取るトレーニングが不可欠です。文脈の中で単語がどのように繋がって発音されるのか、ぜひ意識しながら聞いてみてください。
また、チャンク単位で意味を捉える方が情報をより早く処理できます。会話にも流暢さがプラスされ、相手にも好印象を与えられるでしょう。
文字に頼らず、耳を使って練習するのがオススメ
実際の会話に台本は存在しません。耳だけを使って音そのものに意識を集中し、文脈の中で単語やフレーズを捉えるトレーニングが有効です。文字は補助的なものとして利用することをお勧めします。
リピーティングで効果を最大限に引き出せる
リピーティングは「聞いた音声を一時的に頭の中に保持する」といった工程が入るため、記憶力の強化も期待できます。具体的な会話のシーンを思い浮かべながら、繰り返しリピーティングを行うとさらに効果的です。
ビジネスシーンで成功するためには、周りに差をつけるコミュニケーション能力を養わなければなりません。音声変化を克服しリスニング力を向上させることは、コミュニケーション能力を高める第一歩です。本記事で紹介した内容を参考に、ぜひ実践してみてください。
音声変化の学習は一朝一夕にできるものではなく、継続的にトレーニングを重ねていくことが大切です。英語学習アプリや教材を活用したり、ネイティブとの会話の機会を積極的に作るなど、様々な方法を試して自分に合った学習方法を見つけてください。
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監修:松尾 光治
元大手英会話スクールの教務主任、教材開発。在米35年、現在もニューヨーク在住。早稲田大学第一文学部中退、英検1級、TOEIC985点。英会話の講師とニューヨークでの日系商社での勤務経験から、日本人ビジネスパーソンを対象にした実用的な英語教材を開発。
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